北国の宝石〜夜景に浮かぶ北海道〜

一人旅はもうしない。僕はいつしかそんな頑なな思いを胸に抱き始めていました。旅はよくない。なぜなら、旅は変容の無い平凡な日常のことを嫌いにさせてしまうから。ましてや一人旅なんて、そんな自由度の高くて楽しすぎることを一度経験してしまったらもう人生はおしまい。だから僕は一様に「旅はいいよ!した方がいいよ!」と誰彼かまわず勧めることに少しながら躊躇を感じるのです。

世界三大夜景のひとつと謳われる函館山から見下ろす街の光。

旅を主体とした人生の魅力について書き続けているこのブログのテーマと矛盾するようなことをいきなり書いてしまいましたが、本当の「旅」というのはそれこそ諸刃の剣のようなものではないでしょうか。だから例えばアメリカのBurning Manのような、いわゆる人生の楽しさの真実を垣間見てしまったが為に社会の形式の中に居場所が無くなってしまった世間のはみ出し者達にとって必要なコミュニティーが生まれるんじゃないかなと憶測します。自分は(今のところ)普通に会社勤めで気が赴くままに外に出るだけの一般庶民ですが、旅という魔物(そうです、魔物なのです旅は!)が放つ煌びやかな生命の光に魅せられてしまったがために、その鋭利な刃に一筋ならず幾筋もの切り傷を負ってしまったバカヤロウの一人なのです。

夜景はスローなシャッターで。 雪がちらつく函館の街の周りを安ものだけど軽い三脚を担いで歩き回りました。

高校生のときに当時住んでいたグアムから一人で四国に行ったことがありましたが、そもそもあれがいけなかったなと今になって思います。15年くらい経った今でも僕の中にある旅の理想像とでも言いましょうか、一人旅の基準はあの四国を一人で回ったときにあった人との出会い、そして幼き頃の感受性に直に触れた経験に根付いていると感じます。それは丁度10代のときに触れた音楽が人生をとおしてずっと特別な意味を持ち続けるのと同じ感覚ですね。若い時のひとり旅は嘘じゃなくて本当に人生の構造を形成します

冒険のスケールが大きくなればなるほど整頓された日常に戻るためにはかなり大きな努力が必要となります。掛け値の無い人生経験との引き換えに失う物が大きいガチな一人旅は柔軟性のある20代のうちにやっておきたいというのにはそんな理由があります。そんなこんなで先月11月、僕は再び心の誓いを破り一人旅に赴いたのです。

目的地は北海道。

生まれて始めて訪れた北海道。沖縄を除いて日本で唯一足を踏み入れたことの無いこの最北の地に何故か冬入りでめちゃくちゃ寒い11月末を選んで上陸したのでした。そしてその土地で僕は再び確信させられました「やっぱり一人旅は間違いねえな」と。

函館山から見下ろす星屑のような夜景、そして

一人旅をしているとどこに行っても人との出会いがあり、その何気ないコミュニケーションのひとつひとつに熱を帯びた感動があります。それは例えば言葉の全く通じないクスコの山奥であったとしても、自分と同じ日本語を喋る日本人の住む函館の横丁であったとしても同じことなのです。

今回のこの投稿は北海道の地で僕が見たもの感じたものを一人でひたすら歩いた夜の町並みで撮った夜景のスナップと併せてお送りしたいと思います。

函館のご当地ハンバーガーのお店ラッキーピエロ。看板メニューともいえるチャイニーズチキンバーガーは甘辛なソースにチキンのサクサクした食感が完璧で美味しかった。

いきなり特急列車をミスった。

 

新千歳空港エリアから函館への鉄道事情が非常に限られていることを知らずいきなり列車をミスって南千歳の駅で1時間ほど待機することになりました。駅構内に弁当屋さんがあったので取りあえず『いくら弁当』を買ってゆるゆると時の流れに身を任せていると、東南アジアから来た観光客らしきグループが地元のツアーガイドの説明を聞きながら向かい側のベンチで寒そうにしていました。雪こそ降っていないがさすが北の国と呼ばれている北海道…寒ぃぜ。

待ち時間の長い駅に来る度に鉄道での一人旅というのはこんな感じだったなと例の四国旅行の事を思い出します。あの時は終電を乗り継ぎながら愛媛の高松から高知まで無人駅を転々としたんです。一本乗り過ごしたら本当にヤバかったんでドキドキしたのも、今では懐かしい思い出です。

函館山ロープウェイ付近、元町のエリアには素晴らしい夜景スポットが目白押し。これは本願寺函館別院の見事な建築を坂道沿いから見た様子です。

最初の目的地の函館に到着したのは陽が落ちて間も無くの事。街には粉雪が舞い始めていました。今回の一人旅で僕が始めて言葉を交わした北海道の地元人は函館駅の観光案内所の兄さん。世界三大夜景のひとつとも呼ばれている函館山の頂上まで行きたいのだけど、雪も降っているし写真は撮れるだろうかと尋ねたところ、親切にライブカメラ(函館山の頂上に設置されているカメラから送信されてくるライブキャスト映像)で夜景の見え具合を調べてくれました。「山の麓からロープウェイの乗り場が見えなくなると吹雪き過ぎているので今の状態だと夜景は殆ど見えないです」 なるほど。とりあえず宿泊先まで向かい荷物を下ろしてから次の行動を考えることにしました。

函館でお世話になったペンション・パピィーテールHostelworldじゃらんでも予約を入れられるゲストハウス風の宿舎なのですが、受付の方の対応もとても温かかったのでオススメします。北海道の寒い土地ながらの人情というか、一人旅をしていると時折感じる孤独感も包み込むような大らかさで、北海道いいところだな〜と一発で好感を持ちました。

宿舎の内装も異人館といった表現がピタリと当てはまりそうな、明治時代から急激に近代化を目指した日本の転換期を思わせるビクトリアン風の面白い装飾が印象的でした。個室は畳の上にコーヒーテーブルと座椅子(笑)といったシュールなセットアップがあり、敷布団には電気毛布が入っていました。この心遣いには感動しましたねぇ。

江戸時代、本州以南で苦しい活動をしていたキリスト教布教者が渡って来たと云われる函館には今でも教会があちらこちらに在り、クリスマスに向けて準備をしている様子でした。

一人旅の醍醐味はやっぱ好きな時に食べたいものを食べられる自由です。

函館といえば塩ラーメンということで何店舗か食べ歩きましたが、一番気に入ったのはパピィーテールの受付の方に教えて頂いた星龍軒という老舗の中華料理屋さん。ここは噂に違わず絶品でした。あっさりめのスープにミツバがのっているラーメンは生まれて初めて食べましたが、即座にファンになりました。函館に来たらここのラーメン屋さんはマストですよ!

お腹の欲求を満たした後は雪も弱まったのでふらふらと夜の函館を歩き回り、函館山を目指してロープウェイ乗り場までマイペースに向かいました。

粉雪がちらついていましたが函館山から見下ろす夜景は黒いタペストリーに宝石を散りばめたように輝いていました。

函館もそうですが、北海道のようにキリッとした寒い土地にある都市は何故に夜景が美しいのでしょうかね?

僕が昔住んでいたボストンもそうでした。夏はうだるように暑く冬は情け容赦ない極寒の雪景色になるあの街もピンと冷え切った夜の雰囲気が本当に憎らしいくらいに美しかった。

お気づきかもしれませんが、ここに掲載している写真のほとんどが元町金森赤レンガ倉庫街の周辺で撮影したものです。不思議な異国情緒を帯びた函館の建築物は日本離れしているように僕の目には映りました。被写体を選ぶのにも、サンフランシスコで普段見慣れている西洋建築のスタイルが多いので戸惑いました。

恐らく「レトロ」という表現が一番的確なのでしょうが、昔から西洋文化の玄関口となっていた函館港の周辺には今でも当時の西洋文化の影響がいい意味で中途半端に残されているので独特な風格が強調されているように映ります。

夜の写真撮影を一通り堪能した後は地元の人に教えられた大門横丁の屋台を巡ってみることにしました。

何気なく目に付いた『炉端 大謀』のお店の扉をガラリ。
8席しかない店内の一席に腰を下ろして生ビールを注文。

大門横丁は小さな飲み屋が並ぶ函館の夜のちょっとした新名所。それぞれ個性のあるお店は一人でふらりと入っても面白い。とりあえず生ビールを頼んで地元客と話をしてみよう。

「お客さん1」札幌からネタ取材に来ていた作家さん。

「お客さん2」イカの研究をしていてイカについての論文も発表しているイカの専門家?博士?らしき人。

「お客さん3」本州から出張に来てたまたま呑みに来ていた函館出身の会社員の二人。

「ママさん」青森の八戸から恋人を追いかけて函館に越してきたという亥年生まれのママさん。

…そこに東京経由でサンフランシスコから一時帰国している僕が混ざり込むというジム・ジャームッシュも顔負けなシュールなストーリー設定の出来上がりです。小さな屋台でたわいのない小さな話題で盛り上がり、酒もすすむ楽しい夜でした。
二次会のカラオケはお客さん#3の友人の営むスナックで笑。
この晩は本当に呑んだな〜。

北海道に行ったら横丁には必ず行くべきです。
其処の屋台できっと素敵な人たちとの素敵な出会いが待っていますから。ママさんがみんなに出してくれたお通しの松前づけの味が今でも忘れらんないです。

クリスマスツリーに彩られた金森赤レンガ倉庫街のスナップ。
函館駅の近くに佇む少年の像。寒くないように誰かがスカーフを巻いてあげました。

一人旅のいいところは自由気ままにその日その日の計画を立てられること。酔いつぶれても迷惑が掛からない。せっかくの冒険なんだから自分の興味ある場所にだけ行けばいいし、まわりの協調を求める必要はない。Life is but a magical thing!

五稜郭で函館奉行所の歴史そして土方歳三を始め明治維新最後の函館戦争について勉強したり、ご当地ハンバーガーの人気店ラッキーピエロで最高に美味いチャイニーズチキンバーガーを食べたり、北方民族資料館で前から興味あったアイヌ民族の風習や歴史を学んだり、これが本当の意味で自分の範囲を広げる『旅』というものなんだなと確信できるのが自由度の高い一人旅の魅力です!

小樽運河。シャッタースピード30秒。

小樽の思ひ出

北海道はいつかまた感動を共有したい友達と来てもいい場所だろうなと思う半面、一人旅だからこそ最適な場所なのかも知れないとも思います。新幹線がまだ直通していない(2016年12月時点)函館よりも北の地域への移動はそれなりの時間を要するので一人旅をしているという実感は高校時代の四国旅行の時とほぼ同じでした。

交通のアクセスが行届き過ぎている都市部は面白みに欠けるから、ある程度『inconvenience』を味わいつつ目的地に辿り着く楽しみ方も国内外のバックパッカーにウケやすいのではないかと推測します。今回は行けなかった知床の国立公園やニセコでのウィンタースポーツなども予定に組み込んで行けば一人旅の可能性は無限大です。

函館の次に僕が向かった小樽は北海道の珠玉と呼んでもいいくらいに綺麗な場所でした。明治時代にはニシン漁と世界貿易で栄えた先端の町だった小樽は残念ながら現代にはその日の栄光を残してはいないものの、その昔に建てられた建造物が今でも保存されており当時の面影をところどころに思い起こさせます。中でもレンガ倉庫の立ち並ぶ小樽運河の夜景は見事なものでした。

メルヘン交差点という様々な疑問を投げかける名前を冠した十字路からオルゴール店やガラス細工の専門店をひとつずつ覗きながら歩いていると『北紀行』という看板の掛かった小さなアートギャラリーに行き当たりました。

札幌から毎日車でここまで通い続けているというオーナーの伊藤正博さんは10年ほど前に会社員を辞め、自分の本当の情熱の源である油絵を本業とするために独立してこのギャラリーを開いたとおっしゃられていました。「夏場は観光客も多いので売り上げはいいのだけれど、冬場はお客さんも少ないので作品作りに専念しています」…そうぼやかれながら指差された富良野のラベンダー畑の絵はとても自然にとても穏やかに北海道の風を僕の心に運んできました。自分の信念を大切にして独立を決心された伊藤さんのライフストーリーもお聞かせいただき、とても素晴らしい思い出となりました。

冬は寒いけど、ゲストハウスでじっとしているのももったいないと感じてしまうほど人情と美しい夜景に満ちた場所。それが僕の得た小樽の印象です。

一人旅をしていると、ところどころで出会う人との交流がとても尊く感じるようになります。一期一会と言葉で表現してしまうと何とも儚い響きになってしまいますが、その一度だけの出会いの中にどれだけの感動を見出せるかということにこそ『旅』の面白みがあると僕は考えます。アートギャラリーの伊藤さんとの会話のように旅が終わって現実に戻ってきたとしても反芻して今後も何かしらの形、例えばこのしがないブログに文章をしたためるような事も旅の面白みなのではないかと僕は考えます。そして人との出会いの中で僕が落として行くストーリーにも何かしらの意味が残ればいいなと思います。

「ギブ・アンド・テイク」なんつったら大袈裟ですが、旅人である以上、自分も訪れる土地に何かしらポジティブなストーリーの種を落としていきたいです。人から学び、自分も教える。当たり前のことだけど日常の中でもなかなか実践しにくい人間関係の基礎ですね。自分の知らない世界で生きてきた人たちとの会話はまさしく最高な酒の肴です!

小樽で宿泊した「おたるないバックパッカーズ杜の樹」さんでも面白いストーリーを持った人たちとの出会いがありました。オーストラリアから新潟に住んでいるという親戚を訪ねるべく何故か北海道に来ていた青年。かつて無一文でヒッチハイクなどを繰り返しながら東南アジアやアメリカでロードトリップをしたというゲストハウスのオーナーさん。小樽で新しい人生を切り拓こうと頑張る女性。本当に面白い人たちとの出会いが今回の旅に彩りを加えました。

最高のひとり旅は後遺症が大きい。これは間違いない事実ですし、であるが故に僕はもう二度と行かないぞ!と心に誓うのですが全くもって無理ですね笑。少なくともあと数ヶ所は何としてでも行ってみたい場所があるので、これからもこの虚しい心の葛藤は続きそうです。

皆さんも是非ひとり旅をエンジョイしてみてください!(←勧めないとか言いながらめちゃくちゃプッシュしてる)

最後に僕が今回訪れた函館と小樽のおすすめ観光スポットを紹介しておしまいにしたいと思います。

日中に撮った写真のコレクションも合わせてどうぞ↓ノース樽じわ。Men who are under the age of 18 must not take any kind of risk because life is a greyandgrey.com generic cialis precious gift from God and health is wealth. Swelling, joint pain, and stiffness of the joints are moving and functioning properly. buy cheap levitra Everyone enjoys driving and the convenience and freedom it brings. discount viagra generic Those that don’t often put things at the top that they believe will ultimately lead to them levitra in india being happy.

《函館》

  • 函館山の夜景。
  • 北方民族資料館(アイヌ民族やオホーツク海以北の先住民族の伝統衣装や歴史について多くの資料が在り)
  • 金森赤レンガ倉庫。
  • 谷地頭温泉(函館市内から路面電車で気軽に行ける温泉!)
  • 星龍軒の雲呑塩ラーメン!
  • 五稜郭(タワーからの見晴らしも最高!)
  • ラッキーピエロのチャイニーズチキンバーガー(ラッキーガラナもマスト!)
  • タチカワカフェ(建物そのものが重要文化財に指定されているカフェ)
  • 大門横丁で飲み歩く!
  • 函館駅前の朝市で海鮮丼を食す。

《小樽》

  • 『おたるないバックパッカーズ杜の樹』で宿泊&旅人との交流。
  • メルヘン交差点からオルゴール店やガラス細工のお店を見てまわる。
  • 小樽運河の夜景。
  • 北小樽運河と鱗友朝市。
  • 旧日本郵船(株)小樽支店で丁寧なガイドさんに小樽の歴史を案内してもらう。

 

 

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