旅には目的があるものですが、特にガッチリと計画を立てて行程どおりに動くよりも行き当たりばったりの寄り道をしながらぼんやりと思い描いたイメージに沿って放浪するのも楽しみ方のひとつではないでしょうか。
ロードトリップはアメリカの広大なスケールを味わうには最善の旅行方法で、いつまでも其処に在り続ける自然の彫像物に囲まれながら星を眺めたり、ぼんやりと瞑想したり、思い思いの楽しみ方があります。
以前、別の投稿でも紹介したロードトリップの魅力ですが、先日はユタ州の国立公園を巡る8泊9日の旅に出てきました。目的は限られた時間でユタの国立公園全5箇所と、絵画のような美しい写真が撮れることで有名なアンテロープキャニオン、そしてナバホ・インディアンの聖地でもあるモニュメント・バレーを巡り、さらに足を伸ばしてイエローストーン国立公園まで行っちゃおう！という壮大なもの。目的地はその日その日で決めながら、アメリカ南西部の広大な砂漠をエンジョイしてきました。
これからお送りするこのロードトリップ投稿のシリーズは先日の旅の記録を6つの章に分けて、写真とともに紹介していきます。これから同じようなロードトリップをしようと思っている方にも使える情報を発信できるように書いていきます。
では、始めましょう！
旅のはじまりとユタ州の国立公園
サンフランシスコからユタ州のソルトレイクシティーに向かう約1時間30分の短いフライトは、これから待っている30時間ほどのドライブと2800kmという長い距離をまるで簡単圧縮したような奇妙な違和感を与えました。この密封された飛行機の中で過ごすたった1時間30分の時間と引き換えに足元の大地に広がる大自然の美しさを見逃してしまうのは何と勿体無いことでしょうか。休暇をとって飛行機で移動する時、特に今回のような壮大なロードトリップに向かう道中では時折そんな思いが頭を巡ります。
ユタ州の州都ソルトレイクシティの空港はサンダンス映画祭やスキーリゾートに向かう人々が移動拠点として利用することが多い場所で、飛行機で乗り合わせたポートランド出身の旅人もこれからユタの東にあるパークシティまで登山に行き、そこからコロラド州に向かうという話をしていました。僕たちも空港で車を借り、ここから東南方面にあるアーチズ国立公園とキャニオンランズ国立公園へ向かう予定で山に囲まれたこの都市に到着したのでした。
空港でレンタカーをピックアップしたのが金曜日の午後7時半過ぎ。この日はスーパーで水と食料の確保と、宿泊予定のキャニオンランズ国立公園のキャンプ場へ移動のため約5時間かけて夜間のドライブをしました。ユタ州は全体的にドライな砂漠地帯が広がっているので、脱水症状にならないように出発前に水をしっかりと確保しておくことを勧めます。
仕事後の出発だったので5時間のドライブはなが～いものでしたが、空には満天の星が広がり車の窓からは流れ星や天の川も見え、都会から離れた大自然の真ん中までやって来た実感を味わうことが出来ました。
宿泊予定だったキャンプ場はキャニオンランズ国立公園の砂漠の真ん中にちょこっとテントを張っただけという何ともお粗末なもので、この晩は凍えるほど寒くて一睡も出来ないというまさかの事態が発生。初日から苦汁を味わうこととなりましたが、気分を切り替え、日の出前にアーチズ国立公園まで移動して朝日を見る流れとなりました。
Delicate Arch
暖房の効いた車でうとうとしながら走ること1時間ほど、アーチズ国立公園に到着しました。時間は午前7時ごろ。公園のゲートは24時間体制で開放されていますが、受付は8時まで無人状態だったのでそのままスルー。朝焼けで有名なスポットDelicate Archの駐車場まで向かいました。
Delicate Archはユタ州の車のナンバープレートにも描かれているアーチズ国立公園の代表的なアーチ岩で、車でも結構簡単に見に行くことができます。ルートは二通りあって遠目から眺望する展望台は駐車場からすぐ近くですが、一番定番なのが往復4キロ強のDelicate Arch Trailを歩いてアーチの目の前まで行くこと。行きは登りが多く、山歩きに慣れていないと少々苦戦するかもしれませんが、視界がパーッと晴れて堂々とそびえ立つアーチが目の前に現れたときの感動は大きなものです！日中は特に気温も高くなるので水分補給のために水は一人2リットルから3リットルは持参するようにしましょうね。
アーチに辿り着いたときには完全に日が昇っていましたが、太陽の光の角度がアーチにちょうどいい陰翳を与えて、写真も撮りやすくカメラの設定も余裕を持って行うことが出来ました。さすがに名所なのでお客さんも多かったです。ハイキングコースの途中、脇道に逸れる感覚で岩壁をよじ登ってみると、岩穴越しにアーチが綺麗に見える隠された写真スポットもありました。
Delicate Archの他にも様々な姿をしたアーチ岩の群衆が見られるアーチズ国立公園ですが、特に車でも簡単に近づけるBalanced RockやDouble Archなどは観光客で賑わっていました。もし限られた時間でこの公園の魅力を最大限に味わえる場所に行きたいのであれば、やや難易度は高いですがハイキングでLandscape ArchとDouble O Archまで行ってみることをお勧めします。某アメリカの旅雑誌でもベスト５に選ばれたハイキングコースですが、ここでは公園の特徴的な赤い岩や洪水で岩が削られ出来た切り立った谷を抜けながらDelicate Arch以上にデリケートで繊細な形をしたLandscape Archと上下対象のアーチ岩が円形を作り出しているDouble O Archの二つを見ることが出来ます。見晴らしのいい展望台も多いコースなので、ここ一箇所だけでもかなり色々見れます。
Landscape ArchとDouble O Arch
(Devils Garden Trailhead駐車場から約7km / 所要時間 約2時間半)
アーチズ国立公園の北の一番奥にあるDevils Gardenの駐車場から開始するハイキングコースです。水は必ず持って行きましょう！Devils Garden Trail（悪魔たちの庭）と何とも恐ろしい名前ですが、Landscape Archに向かう最初の2.5キロはほとんど平坦な道のりなので案外ラクラク。Landscape Archの目の前には大きな岩が空に向かって突き上がっていて、この上でお昼ご飯を食べたり休憩すると最高です。
Landscape Archを通り過ぎてさらに先に進むと今度は岩場が広がり、斜面を登っていくポイントがあります。ここがこのハイキングコースの最初の難所で、200-300メートルほど岩をよじ登っていくことになります。よじ登るといっても両手両足を使わないと上がれない場所はあまり無いので、ある程度運動神経があれば問題なく上がれます。岩場を乗り越えると後方にはLandscape Archと広大な砂漠の風景が広がりジワジワと感動をそそります！
コースをさらに進んでいくと、両側とも切り立った崖の上を歩くポイントがあるので高所恐怖症の場合は要注意。しかし見晴らしはとても良く、地平線の向こうまで見えるのではないかという眺望です。Double O Archという看板が見えたらゴールはもう目の前。岩場を少しずつ下っていくと左手側にダイナミックなO型のアーチが！
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Double O Archはその名の「O」が示すとおり、上下対象のアーチが見事な円形を描く自然の力が生み出した芸術作品です。このアーチ一つ一つが何百何千年という時を経て岩の風化と洪水の力で出来上がったのかと思うと座り込んでじっくりといつまでも眺めていたくなります。アーチをくぐって反対側まで行くとその綺麗な円形をしっかりとカメラに納められる場所がありますので記念撮影も忘れずに。
Double O Archを後に来た道を引き返していくとまた違った景色が見れて感動を呼びます。最初は岩の上に向かっていたために気が付かなかった下方の岩の群集や、遠目に見えるLandscape Archの姿。そして岩の表面に浮き彫りにされた波紋模様など新しい発見がたくさんあります。アーチズ国立公園は其処にいるだけで大地の息吹を感じ取れる、奇妙でいてどこか懐かしい大自然の庭のような場所でした。
最後に観光案内所に行き国立公園の年間パス「America the Beautiful Pass」を$80でゲットしてキャニオンランズ国立公園へ。綺麗な夕陽が見れるかどうか？
Island in the Sky :: Canyonlands National Park
アーチズ国立公園から40分ほどのドライブでキャニオンランズ国立公園の北部にあるIsland in the Sky（天空の島）の観光案内所に到着。そこから更に20分掛けてキャニオンランズを一望できるGrand View Point展望台へ。ここIsland in the Skyはその名前のとおり、まるで空の上から下界を見渡すようなダイナミックな景色が衝撃的でした。キャニオンランズ国立公園の最大の特徴は大地をえぐり取ったような深い渓谷群のみせるスケールの大きさで、展望台の崖の淵から底を覗き込むと岸壁の層が経過した時間をしっかりとその場所に記録しているように見えました。
Grand View Pointで絶景を堪能した後は日没を見るためにMesa Archへ。
残念ながらMesa Archはアーチの窓が東の方角に開いているため日没にはあまり向いていない場所でした。しかし沈む太陽の淡い光を受けた岩壁が少しずつ色を変えていく様子はとても綺麗で、カメラを三脚にセットしてタイムラプスの撮影をしながら、薄いオレンジからピンクそして藍色にゆっくりと変化していくキャニオンランズの景色を眺めました。
日が沈みきるのを見届けてキャニオンランズを後にAirbnbで予約した宿泊場所へ向かいました。旅はまだ始まったばかり。次の目的地には何が待っているのでしょうか。
《つづく》
PART 3 :: ロウアーアンテロープキャニオンとザイオン国立公園!
PART 5 :: キャピトルリーフ国立公園とボンヴィル塩湖!
★英語ですが参考になる国立公園の情報★