皆さんこんにちは、いつもご愛読ありがとうございます。
さて春の季節も近づいて参りました。今回は久しぶりに日本語でお料理レシピの投稿になります。
私の住んでいるサンフランシスコはカリフォルニア州の北部の港町で、カニやイワシや雲丹など様々な海産物が採れます。観光名所のFishermans Wharf(サンフランシスコ港に設けられた倉庫街)ではそれらの海産物を食せるのですが、中でもクラムチャウダーが一番の人気です。クラムチャウダーはアサリをジャガイモや牛乳と一緒にじっくり煮込んだスープで、アメリカ東海岸のボストンの名物として有名です。ここサンフランシスコではクラムチャウダーをサワードゥ・ブレッドの器に注いで食すのが定番となっています。サンフランシスコにはアメリカ開拓時代からサワードゥ・ブレッドを主食とする文化がずっと続いているのです。
このサワードゥ・ブレッドですが、発酵させた小麦粉やライ麦粉と水から生み出される酵母や乳酸菌を熟成させた「種」を使って作るパンで、ヨーグルトに近い酸味があるのが特徴です。この手法で作られるパンの歴史は古く、もっとも古いパンの一種として世界中で伝統的に受け継がれています。カリフォルニアにも19世紀中盤のゴールドラッシュとともに伝わり、まん丸い形のサンフランシスコ風サワードゥ・ブレッドとして今日に至ります。
サワードゥ・ブレッドは牛乳や卵といった動物から由来する食物を一切使用しないのでVegan Foodとしても強い関心が持たれています。サワードゥの種は家庭でも簡単に作れるので、今回はこの種の作り方を簡単に説明した後に、家庭でサンフランシスコ風のサワードゥ・ブレッドを作る方法を写真と一緒にお送りしたいと思います!
サワードゥの種
サワードゥの種を作るのには小麦粉と水を混ぜ合わせ、一定の温度(大体20℃から25℃くらいが最適です)に保ちながら定期的に内容の半分を捨て→新たに混ぜ合わせた小麦粉と水を足していく作業を一週間掛けて行い熟成させていきます。「種」の元となる小麦粉と水の分量は1カップ: 1/2カップが目安です。これをカバーできるガラス瓶やプラスチック製の容器に混ぜ合わせたものが「種」の第一歩になります。容器はラップや布でカバーできるもの、蓋が付いているもの、最低でも1リットルの容量があるものであればなんでも構いません。金属製のものは菌の活動に影響が出るので出来るだけ避けた方が良いです。「種」となる菌は呼吸しますので、蓋やカバーは緩めに締めてあげてください。
最初の24時間では発酵の活動は認められにくいですが、24時間が経過した時点で容器の中の半量の「種」を捨てます。そして残った半分に事前に混ぜ合わせておいた小麦粉(1カップ)とぬるめの水(半カップ)を混ぜ合わせます。粘りのある粘土状になれば完璧です。
さらに24時間放置して、翌日(3日目)には12時間置きに「種」の半量を捨て、新しく(1カップ)とぬるめの水(半カップ)を混ぜ合わせる「お手入れを」行います。3日目から「種」にプツプツとした泡が出始めます。
12時間置きに「種」の手入れの作業を4−5日間繰り返し、酵母と乳酸菌が活発化し上の写真のようにプツプツが全体に現れた時点でサワードゥ・ブレッドの熟成に使える「種」の完成です!
(*サワードゥの種を作るのには菌の活動がしやすい環境を作ってあげることがポイントです。夏の暑い日は直射日光を避け、冬の寒い日はヒーターなどの熱が届きやすい比較的暖かい場所に保存してください。
**「種」作りのショートカットとして最初に野生酵母(天然酵母)を15g入れるとより早く熟成が可能です。野生酵母についてはこちらのブログで詳しく書かれています。)
サワードゥ・ブレッドを作ってみましょう。
調理時間の目安:
およそ14時間(注:サワードゥの種は事前に準備しておいてください)
調理具:
□ 円周20センチ以上のボウル
□ ダッチオーブン(あるいはオーブン加熱の可能な鉄窯)
□ スクレッパー
□ パンプルーフバスケット(ベネットン)
□ 計量器
□ ワックスペーパー
材料:
□ 熟成させ泡立ちが豊かなサワードゥの種…50g
□ 水(26℃)…350g
□ 強力粉…500g
□ 塩(粒子の細かい天然塩がおすすめです)…15g
今回は週末の土曜日と日曜日を使ってサワードゥ・ブレッドを作ってみましょう。平日に熟成させた「種」を土曜日の朝(今回は午前10時)に予定通りの手入れ(上の「サワードゥの種」を参照してください)で新しい小麦粉を摂取させふっくらと元気にさせます。「種」の発酵加減がマックスに達し始める午後8時頃にパンの下準備を始めましょう。
土曜日➖午後8時
サワードゥの種(50g)をボウルに落とし、26℃に調整したぬる水350gを入れてフォークでしっかりとかき混ぜます。そこに強力粉(500g)と塩(15g)を入れ、全体に粘りが出るまでさらに混ぜます。手を使い全体が均等になるまでしっかりとこね合わせます。手についた生地をできるだけ削ぎ落としボウルに戻し、濡れタオルを被せて30分ねかせます。
時間がきたら生地の塊に丸みを与えていきます。やり方としては、ボウルの淵から底に向かって手を入れて生地を引っ張り上げるイメージで、伸ばした生地をボウルの中心部に織りこんでいきます。円周を描くようにしてボウルを一周したら軽く撫でて丸みをつけてあげてください。濡れタオルを被せて常温で一晩ねかせます。生地を寝かせる場所の温度は21℃位が理想的です。
日曜日➖午前8時
12時間ほどねかした生地が全体的に膨らみ、元の2倍くらいの大きさになっていれば完璧です。指先でちょっとつまんだ時に生地の中に細やかな気泡を感じられればいい感じです。両手のひらに小麦粉をなじませ小麦粉を敷いた大きなまな板(キッチンカウンターでも構いません)の上に生地をボウルから引っ張り剥がし落とします。12時間ねかせた生地は弾力性がかなりついているので指先を使ってボウルの壁からも張り付いた残りが簡単に引きはがせます。まな板の上で生地の形を丸く整えていきます。まな板に触れている下の部分がパンの頭になるので曲面を作るときに生地を上に向かって織り込んでいくイメージで(パンの下の部分に織り目をつける感覚で)一周ぐるっと回しながら真ん丸にしてあげてください。丸みが付いたら生地をひっくり返して10分間休ませます。
生地を休ませている間に*パンプルーフバスケット(またの名をベネットン)の内側にまんべんなく小麦粉をまぶしておいてください。
(*パンプルーフとは即ちパンを発酵させるという意味です。サンフランシスコ風サワードゥ・ブレッドはベネットンという木製の螺旋状のバスケットを使いパンを焼く前に最終的なプルーフを行います。こうすることで仕上がったパンに綺麗な螺旋模様がつくのです。)
まな板の上で少しべちゃっとなっているパンの形を両手で引き寄せるように整えてあげて、スクレッパーでまな板に張り付いた部分からこそぎ落とすようにしてパンの頭になる部分即ちあなたの方向に向いている面からベネットンに移してください。ベネットンのセットに付属している専用の布製のカバーを掛けて30分~60分かけてプルーフを行います。この時も21℃前後の常温で生地を休ませます。パンが全体的にふっくらしてきたら焼く準備完了です!
オーブンの熱を230℃に設定し、パンを焼く道具の下準備をします。
ダッチオーブン(あるいはオーブンに入れて過熱がOKな蓋の付いた全鉄製の窯)の底部分から鍋の両取っ手まで届く長さにワックスペーパーを切っておきます。パンはワックスペーパーにのせて焼いていくので、焼きあがった段階で鍋から取り出しやすいようにするための工夫です。
ベネットンのカバーを外し、ちょうどいい寸法に切り取っておいたワックスペーパーを上に乗せひっくり返しパンをワックスペーパーに移します。
パンの頭に小麦粉をやさしくなじませ、刃のギザギザしたナイフあるいはカッターナイフでてっぺんに深さ8mm、広さ6cmほどの刻みをX状に入れます。
ワックスペーパーの両端を使ってダッチオーブンに移し、蓋をしてオーブンにGO!
最初は蓋をした状態で20分焼きます。
そして蓋を外して更に30分。パンの生地が膨らんでいくのが見えてきます。
時間がきたらオーブンの熱を止めダッチオーブンを取り出し、ワックスペーパーの両端を使いパンを取り出します。パンを直にオーブンのラックに乗せ余熱で両面に程よい焼き目がつくまで5分~10分焼けば完成です!
焼き上がりはとても熱いので、常温で一時間置いてから召し上がりください。
今回のレシピを上げるにあたって、色々思うところがったので最後に書かせていただきますが、サンフランシスコに来てから6年、何気なく食べていたサワードゥ・ブレッドは実はとても手間暇かかる食物だったんだなぁということとサワードゥの「種」の手入れは生活の一部になりつつあること。本当にサワードゥ=ライフだなぁという感想です。ちょっと興味を持って始めたことが次のステップに繋がっていくことは間違い無いのでこれからもしばらくは毎週末張り切ってパンを焼こうと思っています!今回のレシピは私も初チャレンジだったということもあり、インターネット上で掻き集めた様々なレシピの納得できる部分を折衷的に繋げ合わせながら、何度かトライしながら推敲を重ねたものを投稿しました。ですので、また近日アップデートするかもしれません。今のところ焼き上がり具合には満足なのですが、パンの下の部分がどうしても焼けすぎてしまい若干焦げ目があるので、それを改善したいと思っています。もしアドバイスがあればお知らせください!どうぞよろしくお願いします!
皆さんのサワードゥ・ブレッドの写真、レシピの感想などもお聞かせいただければ幸いです。
One thought on “お家で簡単!サンフランシスコ風サワードゥ・ブレッドの作り方”